52-1) 70歳代、男性。腹部を車に轢かれて救急搬入された。 |
>画像所見 : 重度の左気胸。縱隔は対側に偏位しており、緊張性気胸といえる。肝の末梢を樹枝状に拡がるair densityがみられる。 >診断 : 門脈ガス血症(portal venous gas) >解説 : 門脈内に入ったairは血流にのって肝辺縁部に達し、樹枝状の分布を示す。肝門部を中心に分布する胆管内ガス(pneumobilia)とは明らかに異なる。本例では腹部を轢かれたことによる腸管損傷と急激な腸管内圧の上昇が原因で門脈内に腸ガスが流入したと推測され、左肺の緊張性気胸と共に極めて重篤な病態である。搬入後直ちにCT検査を行うと共に蘇生術を開始したが事故から1時間後に死亡した。 門脈ガス血症の3大要因:1)mucosal damage、2)
bowel distention、3)sepsis (文献1) |
52-2) 60歳代、男性。腹痛と発熱。胆摘手術の既往あり。 |
>画像所見 : 肝内胆管の拡張とair density がみられる。総胆管内にもair density が明らか(↑) >診断 : 胆道気腫(pneumobilia) >解説 : 十二指腸乳頭部から逆行性に胆道内に流入したガスは胆汁の流れに対抗して上行することになる。従って、前出の門脈内ガスと異なり、胆管内ガスは肝門部を中心に分布する。 |
52-3) おまけ 犬の実験 |
希釈した過酸化水素水を直腸内に注腸すると、粘膜から吸収された過酸化水素は血液と反応して酸素を発生する。発生した酸素は門脈を経由して肝内に達し、肝のエコーレベルは一気に上昇する。CTでも肝内門脈内に充満した酸素が樹枝状に確認できる。若い頃は超音波造影剤の開発を目指して、無茶な実験などもしたものです。 |
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