日々の症例 38 虚血性大腸炎



 

38-1) 50歳代、男性。排便を契機に腹痛と下血が出現したため来院、入院となった。

>画像所見 : US(発症2日後)とCT(発症3日後):S状結腸の高度な壁肥厚がみられる。特に、USでは固有筋層が薄い低エコーレベルの層として確認でき、結腸壁の肥厚の主体は粘膜下層であることもわかる。
>診断 : 虚血性大腸炎(ischemic colitis)
>解説 : 急激に発症する腹痛、下痢、下血が三徴候とされるが、腹痛のみのこともある。直腸を除く左側結腸に区域性に発生し、著明な大腸壁肥厚をきたす。腸壊死に至ることはまれで、多くの場合1〜2週間の保存的治療で軽快する。本例も13日後に軽快退院となった。


38-2) 60歳代、男性。排便を契機に腹痛が出現。

 

>画像所見 : 超音波検査で下行結腸の壁は1cm前後に肥厚しているのが明らか。筋層の低エコー層はほぼ正常に保たれており(▼)、肥厚の主体は粘膜下層であることが分かる(→)。4日後に施行した注腸X線検査でも拇指状圧痕がみられる。
>診断 : 虚血性大腸炎(ischemic colitis)
>解説 : 虚血性大腸炎は臨床所見とUS像で診断が可能であり、多くの場合1〜2週間の保存的治療で改善する。USで肥厚した腸管壁内に不整な高エコーが出現したり、腹水が出現するようなら腸壊死を念頭に置く必要がある。

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