症例 197 外傷性腎損傷




197-150歳代、女性。交通事故にて救急搬送された。強い腹痛。

>画像所見 : 右腎損傷と腎周囲に大量の血腫がみられる。腎実質の不染域(損傷と血腫)は皮質から腎盂に達している。緊急血管造影では腎動静脈の損傷は認めないが、上被膜動脈からの出血を確認し、TAEを施行した。
>診断 : 外傷性腎損傷

>解説 : 
腎損傷の分類は以下の通りで、本例はⅢb型に相当する。
   Ⅰ型腎被膜下損傷 subcapsular inury
:腎実質の挫傷で、腎被膜は保たれている。
      a. 被膜下血腫 sucapsular hematoma
      b. 実質内血腫 intraparenchymal hematoma  
   Ⅱ型腎表在性損傷 superficial inury:腎皮質に留まる損傷。
   Ⅲ型腎深在性損傷 deep inury
:腎皮質から髄質に達する損傷。離断・粉砕があればb。
      a. 単純深在性損傷 simple deep inury
      b. 複雑深在性損傷 complex deep inury
   Ⅳ型 腎茎部血管損傷 pedicle injury

 197-2197-1)のその後の経過

>画像所見  : 
A 1-3:TAE4ヶ月後のUSと血管造影像。Bモードでは一見腎嚢胞が出現しているようにみえるが、ドプラ法では内部に渦巻き状の血流がみられ、動脈瘤と診断できる。腎損傷の経過で仮性動脈瘤が出現したと考えられた。血管造影でも大きな動脈瘤を確認し、選択的にTAEを施行した。
B:腎動脈瘤TAE翌日のUS:動脈瘤内のエコーレベルは上昇しており、血栓化が示唆される。
C:5ヶ月後:動脈瘤は縮小している。
D:14ヶ月後:動脈瘤はさらに縮小し、瘢痕化。
>診断 : 外傷性腎損傷後の仮性動脈瘤
>解説 : 
腎損傷後の合併症として、血腫の感染による腎周囲膿瘍、後出血、仮性動脈瘤、腎動静脈瘻の形成などが報告されている。稀であるが、本例のように、腎損傷後に仮性腎動脈瘤が出現することもあり、定期的な画像診断が必要である。

                                                        寺元記念病院 画像診断センターへ