日々の症例 177 脂肪肝と鉄過剰症




177-1) 脂肪肝と鉄過剰症

           症例A                          症例B             

80歳代、男性。
>画像所見 : 
症例A:単純CTで肝の濃度は著明に低下しており、肝静脈がむしろ高濃度になっている(A1)。MRIグラジエントエコー法のin-paseA2)からout-of-phaseA3)で肝の信号は低下しており、microscopicな脂肪沈着が考えられる。
症例B:単純CTで肝の濃度は上昇しており、いわゆるwhite liverである(B1)。MRI in-paseB2)からout-of-phaseB3)で肝の信号は上昇している。
>診断 : 
症例A:脂肪肝   症例B:鉄過剰症(ヘモジデローシス)
>解説 : 
鉄過剰症は鉄が実質細胞に沈着して臓器障害をきたしたヘモクロマトーシスと臓器障害をきたしていないヘモジデローシスに分けられる。ヘモジデローシスでは肝だけではなく脾や骨髄などにも鉄沈着がみられるが、膵への沈着はない。一方、ヘモクロマトーシスでは脾への沈着は軽度だが、膵や心筋、脳などへの沈着もみられる。最近は、鉄過剰症を原発性(遺伝性)と続発性に分けていることが多い。続発性は無効造血が亢進した病態や鉄の過剰摂取や大量輸血などで体内の鉄が過剰になっている病態である。遺伝性は瀉血療法が奏功するが、続発性では瀉血療法の適応はなく、鉄キレート剤による治療が行われる。
 正常肝のCT値は脾よりわずかに高い程度だが、本例(B)のように肝のCT値が明らかに上昇している場合は、鉄過剰とヨード過剰(不整脈薬治療薬のアミオダロン使用例で好発)を考えなければならない。前者は常磁性体なのでMRIで信号は低下するが、後者は低下しない。
 脂肪肝ではMRIグラジエントエコー法T1強調像のinphaseからout-of-phaseで信号は低下するのに対して、鉄沈着症では逆にout-of-phaseで信号が上昇する。

 177-270歳代、男性。再生不良性貧血で頻回に輸血を受けている。

>画像所見 (単純CT : 単純CTで肝と脾のdensityは明らかに上昇しており、肝脾腫も明らか。膵には著変認めない。USでは肝の内部エコーはやや細かい程度である。MRIではT1,T2共に肝脾の信号は著明に低下しており、高度の鉄沈着が示唆される。膵の信号強度は正常範囲内である。
診断:鉄過剰症(続発性)
解説:本例は再生不良性貧血で頻回輸血(毎週3単位)を受けており、続発性の鉄過剰症である。これほど重度の鉄沈着症例なら、全てのMRIシークエンスで信号低下が確認できる。

                                                   寺元記念病院 画像診断センターへ