日々の症例 134 ラトケ嚢胞




134-150歳代、女性。めまいの精査目的でMRIを施行

>画像所見 : 下垂体前葉の直上に7mm大の腫瘤がみられる(→)。MRIT1強調像、T2強調像ともに高信号で、ガドリニウム造影剤による増強効果はみられない。下垂体は下方に圧排されているが、前葉・後葉とも明瞭に確認できる。
>診断 : ラトケ嚢胞(Rathke cleft cyst)

>解説 : 
T1強調像で高信号であることから蛋白濃度の高い嚢胞性腫瘤と考えられる。トルコ鞍部に発生する嚢胞性腫瘤としては、1)ラトケ嚢胞、2)頭蓋咽頭腫、3)嚢胞成分を有する下垂体腺腫、4)くも膜嚢胞、が挙げられる。信号強度から4)は否定的。正常の下垂体が確認できることから3)も否定できる。存在部位と信号強度からもっとも鑑別が問題となる2)も石灰化や増強効果がみられないことから否定的で、ラトケ嚢胞と診断できる。
  ラトケ嚢胞は下垂体の発生に際して前部と中間部との間が腔として残存したもので、剖検例では226%にみられる。小さなものが多く、症状を呈することはまれ。

 134-260歳代、男性。無症状

>画像所見 : トルコ鞍内に脳脊髄液と同様のT1強調で低信号、T2強調で高信号を示すcystic lesionがみられる。
診断 : ラトケ嚢胞(Rathke cleft cyst)
解説 : ラトケ嚢胞のMRI信号強度は、1T1低信号、T2高信号、2T1T2ともに高信号、3T1は様々な信号強度、T2低信号、に大別できる。基本的にトルコ鞍内(から鞍上部)のT1強調で高信号を示す嚢胞はラトケ嚢胞と考えてよい。


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