日々の症例 87 奇静脈葉間裂




87-140歳代、男性。検診の胸部X線写真

>画像所見 : 右肺尖に弯入があり、ここから縦隔に向かって緩やかに彎曲する線状影がみられる。この線状影の下端は紡錘形の陰影として終わっている。
>診断 : 奇静脈葉間裂(azygos fissure)

>解説 : 
右肺は大葉間裂(major fissure)と小葉間裂(minor fissure)によって上葉・中葉・下葉の3区域、左肺は大葉間裂(major fissure)によって上葉と下葉の2区域にそれぞれ分けられる。葉間裂には種々の変異があり、副葉間裂としては本例のような奇静脈葉の他にも、上副葉裂(superior accessory fissure)、下副葉裂(inferiorr accessory fissure)、左小葉間裂(left minor fissure)などが知られている。いずれも病的意義はないが、こういったvariationを知っていることは画像診断上重要である。
 奇静脈葉間裂は発生過程で奇静脈が肺内にめり込んで出来たものであり、通常の葉間裂は2枚の臓器胸膜で構成されているのに対し、肺外から壁側胸膜をも巻き込んでいるため、計4枚の胸膜で構成されている。したがってこの奇静脈葉間裂を越えて胸水が広がることはない。

87-270歳代、男性。


>画像所見 : 87-1)同様、右肺尖から気管分岐部近くまで伸びるhair line()tear drop(△)がみられる。
>診断 : 奇静脈葉間裂(azygos fissure)

>解説 : 
奇静脈葉はnormal variant で病的意義はないが、ブラと紛らわしいことがある。

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