日々の症例 86 結腸嵌入症




86-140歳代、女性。便秘。

>画像所見 : 胸部単純X線写真で右下肺に一致して多量の消化管ガス像がみられる。CTではこのガス像が肝前面から肝と横隔膜の間に嵌入した結腸のものであることが分かる。
>診断 : 結腸嵌入症(キライディティ症候群Chilaiditi syndrome)

>解説 : 
右横隔膜と肝との間に結腸が嵌入した病態で、無症状のことが多い。1910年にオーストリアの放射線科医Dr. Chilaiditi が本症のX線像を報告した。特に、小児ではガスで拡張した結腸が肝の前面から横隔膜下だけでなく、脾と横隔膜の間にも篏入することがまれではない。腹満感や便通異常などの消化管症状、あるいは呼吸促進や心悸亢進といった呼吸循環器症状を呈し得るが、重大な臨床的意義を持つことは稀。横隔膜下膿瘍や横隔膜ヘルニア、腹腔内遊離ガスなどと紛らわしいこともあるが、基本的には胸部単純X線写真のみで診断可能であり、CTは不要である。

86-260歳代、男性。脳梗塞で半身麻痺があるが、消化器症状なし。

胸部単純X線写真 : 右横隔膜に重なってガス像がみられる。よく観察すると、ハウストラも確認でき、結腸ガスであることが分かる。
>診断 : 結腸嵌入症(キライディティ症候群Chilaiditi syndrome)

>解説 : 肝前面から横隔膜下に消化管ガスが見られることはまれではない。特に症状がなければChilaiditi syndromeなどと病名をつけるほどのことはない。

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