日々の症例 80 絞扼性イレウス




80-170歳代、女性。急性腹症。

>画像所見 : 小腸は拡張し、内腔に腸液が充満している。同部の圧痛も強かった。小腸周囲に混濁した腹水もみられる()
>診断 : 絞扼性イレウス(strangulated ileus)
>解説 : イレウスの本態は腸管拡張と腸液貯留であり、腸管ガスが存在すれば単純X線写真でニボー形成もみられる。本例はUSで腸蠕動の消失と混濁した腹水が明らかで、強い腹痛、白血球増加などから絞扼性イレウスと診断し、緊急手術が施行された。開腹所見では血性で混濁した悪臭のある腹水がみられ、過去の虫垂切除部位の癒着による絞扼性イレウスと考えられた。小腸は広範囲に壊死に陥り、壊死腸管の切除(約130cm)が行われた。

 
80-260歳代、男性。嘔吐、腹痛。開腹手術歴あり。

>画像所見 : 小腸は拡張し、内腔には腸液が充満している。USでは、小腸内容液が二層性になっていることがわかる。つまり、腸管の蠕動が消失して、内容液が混ざり合っていない状態といえる。腹水も貯留しており、拡張した腸管上に強い圧痛があることからも絞扼性イレウスが強く示唆された。
>診断 : 絞扼性イレウス
>解説 : GOT、LDH、CPK といった逸脱酵素の上昇は腸管壊死を反映しているが、壊死部が絞扼されているため、軽度高値にとどまることも稀ではない。腸管壊死に伴う典型的な臨床症状を呈する前に診断できれば、腸管切除を回避できるので、画像診断の役割は重要である。本例は手術が施行されたが、索状物で締めつけられた腸管は既に壊死に陥っていた。

<イレウスの分類>
1)機能性イレウス(狭義のイレウス)
  ①麻痺性

  ②痙攣性
2)機械的イレウス(腸閉塞)
  ①単純性:血流障害を伴わない
  
②絞扼性:血流障害を伴う
<イレウスの三大原因>

1)術後の腸管癒着 2)ヘルニア嵌頓 3)大腸癌。

  
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