日々の症例 75 多系統萎縮





75-1
50歳代、男性。3年ほど前から小脳失調が出現し、徐々に増悪している。

>画像所見 : 大脳の萎縮像が比較的軽度であるのに対し、小脳および脳幹の萎縮が高度である。T2WIで萎縮した脳橋内に十字状の高信号がみられる(cross sign)
>診断 : 多系統萎縮(multiple system atrophyMSA

>解説 : 
脊髄小脳変性症は運動失調を主症状とする神経変性疾患の総称で、遺伝性と非遺伝性(孤発性)に分けられる。さらに、非遺伝性の脊髄小脳変性症には皮質性小脳萎縮症と多系統萎縮がある。
MSAでは以下の特徴的MRI所見がみられる。
  1)T2WIFLAIR像で脳橋に十字状の高信号が出現 (cross sign)。
 2) T2WIで片側あるいは両側の被殻外側後部に線状高信号が出現。
  3) 矢状断で橋、延髄は萎縮し、橋前面の膨らみが消失。
従来、MSA
     1小脳失調が主体のオリーブ橋小脳萎縮症(OPCA
   2)パーキンソン症状(動作緩慢、小刻み歩行など)が主体の線状体黒質変性症(SND
   3)自律神経失調(起立性低血圧、排尿障害など)が主体のShy-Drager症候群(SDS)
を総称していたが、病理像に共通点も多く、現在では小脳失調が主体の小脳失調型(MSA-C型)とパーキンソン症状主体のパーキンソン型(MSA-P型)に分けられている。
本例は、臨床症状からMSA-Cと診断されている。

75-270歳代、女性。多系統萎縮と診断されており、自律神経症状が強くなってきた。


>画像所見 : 75-1)同様、小脳および脳幹の萎縮が重度で、脳橋内に十字状の高信号がみられる(cross sign)
>解説 : 
小脳と脳幹は加齢によっても萎縮をきたしにくい。従って、小脳や脳幹に萎縮があれば中枢神経変性疾患を疑い、家族歴なども考慮して画像診断を進めなければならない。

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