症例 168 部分的肺静脈還流異常




168-160歳代、男性。無症状。

>画像所見 : 右胸郭はやや小さく、心臓の右方偏位と右下肺野から横隔膜下まで連続する弧状の異常陰影がみられる(→)。造影CTではこの異常陰影は太い肺静脈であり、下大静脈に連続することが確認できた。
>診断 : シミター症候群(Scimitar syndrome

>解説 : 
部分的肺静脈還流異常(PAPVR)の一種。肺に低形成の部分があり、その領域の肺静脈が大循環の静脈(通常はIVC)に還流するものをいう。このタイプのPAPVRはほぼ右肺のみ生じる。Chest X-pで右肺の低形成による心臓の右方偏位と右下肺野に三日月刀のような弧状の異常肺静脈がみられるのが特徴的。2025%の症例で心房中隔欠損などの心奇形を合併し、症状の有無を左右する。(scimitar:三日月刀)

 168-220歳代、男性。

>画像所見 (単純CT : 大動脈弓部に沿って左腕頭静脈(V)と左肺門部肺静脈とを繋ぐ血管が走行している(←)。
診断 : 部分的肺静脈還流異常
解説 : 部分的肺静脈還流異常(PAPVRpartial anomalous pulmonary venous return)とは、肺静脈の一部が右心系に還流するもので、原則として最も近い体静脈に還流する。血行動態的には左→右短絡で、ASDと同じ。
 大動脈弓部の突出像で、リンパ節腫大と鑑別を要するものとして以下の3つがあげられる。
  1)左上肋間静脈 left superior intercostal vein
  2)左上大静脈遺残 persistent left superior vena cava
  3)部分的肺静脈環流異常 partial anomalous pulmonary venous return
いずれも頭側では左腕頭静脈に合流するが、尾側では1)は副半奇静脈、2)は主に冠状静脈洞、3)は肺静脈に連続することで鑑別できる。

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